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今は途絶えた、ふくよかで美しい和紙
宮城県白石市で生産されていた「白石和紙」は、平安時代より東北地方で作られており、紫式部や清少納言も愛用した格式高い“みちのく紙”の流れを汲んでいます。江戸時代には仙台藩主と白石城主の片倉家の奨励や保護を受け、農閑期の内職として発達してきました。以来、白石の特産品として明治時代まで盛んに作られましたが、工場生産の洋紙が出回るとともに衰退。その後に代々続く紙漉き(かみすき)農家の8代目遠藤忠雄が昭和初期に、地元で採れる良質な楮(こうぞ)を使用した和紙作りを再開しました。
手触りがよく、ふくよかで美しい「白石和紙」は再び注目を集め、重要文化財修復用紙や奈良東大寺“お水取り”(修二会(しゅにえ))の紙衣、さらには昭和20(1945)年、米戦艦ミズーリ号で署名された日本の降伏文書にも使用されました。忠雄亡き後は、妻のまし子さんが紙漉きを継いでいましたが、ただ一軒の白石和紙工房も、残念ながら平成28(2016)年に閉鎖。地元の人々はもちろん、全国から惜しむ声があがっています。
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